人の首を強調した形...「元」

　「お元気(げんき)ですか？」は日常(にちじょう)の挨拶(あいさつ)言葉(ことば)です。「元」は、甲骨文(こうこつぶん)では「」（人(ひと)の首(くび)を強調(きょうちょう)した形(かたち)）と「」（人の側身形(そくしんけい)）で、首の意味(いみ)を示(しめ)す文字(もじ)です。「元」のつく言葉は、「おおもと」「はじめ」の意味では、「元祖(がんそ)」「元素(げんそ)」「元日(がんじつ)」「元気」があり、「かしら」の意味では「元首(げんしゅ)」「元服(げんぷく)」「家元(いえもと)」のほか、令和(れいわ)などの「元号(げんごう)」が当(あ)たります。
　「乾坤一擲(けんこんいってき)」（天地をかけて一か八かの勝負をする）という言葉があります。宇宙(うちゅう)の事象(じしょう)を陰(いん)と陽(よう)に二分(にぶん)して考(かんが)える「易(えき)」では、「乾」は３つの要素(ようそ)がすべて「陽」の卦(け)のことで天(てん)を示し、雨(あめ)を降(ふ)らせ地(ち)を潤(うるお)す元の気(き)（乾元）があり、「坤」はすべて「陰」で地を示し、万物(ばんぶつ)を生育(せいいく)させる元の気（坤元）があるとされました。両極端(りょうきょくたん)を投(な)げうつ（一擲）から、「一(いち)か八(はち)かの勝負(しょうぶ)」となったわけです。
　「お元気ですか？」とは、こうした「元の気」が、人間(にんげん)の体(からだ)という小(しょう)宇宙の中(なか)をきちんと流(なが)れていますか？という意味があるのです。
　皆(みな)さんが、今年も「元気」で過(す)ごせますように。
（産経国際書会常務理事、眞田朱燕）