煤（すす）を集めて墨を作る...「黒」

　書道(しょどう)は、紙(かみ)の白(しろ)と墨(すみ)の黒(くろ)を使(つか)った「白と黒の芸術(げいじゅつ)」と言(い)われます。今回(こんかい)は、「黒」の成(な)り立(た)ちを見(み)ていきます。
　「黒」のもとの字(じ)は、「柬」（かん）と「火(ひ)」（れっか点(てん)）を組(く)み合(あ)わせた形(かたち)とされています。「柬」は「橐(ふくろ)」（東）の中(なか)にものが入(はい)っている、ことを表(あらわ)し、これに下(した)から火を加(くわ)えて、ふくろの中のものを焦(こ)がして黒くすることを表し、「くろ」「くろい」の意味(いみ)となったとされています。上(うえ)の篆書(てんしょ)をみると、袋(ふくろ)を火にくべている様子(ようす)がよくわかりますね。
　また「黒」は、煤（すす）を集(あつ)めて墨（すみ）を作(つく)る様子を描(えが)いた漢字(かんじ)とも言われています。墨は、松(まつ)、菜種油（なたねあぶら）などを燃(も)やして煤を取り、膠（にかわ）と混(ま)ぜて作ります。この墨の色(いろ)が「黒」というわけです。私(わたし)は墨を擦ってよく書道をしますので、この成り立ちはしっくりきます。
（産経国際書会評議員、鈴木暁昇）