2020年10月16日

[137]客員顧問・東華書院会長・現代書作家協会会長 齊藤華秀さん(67)

第33回産経国際書展出品作品「風林火山」(縦90×横180センチ) 20201006_sumifude_2.jpg  会員向け書道研究誌「東華」が、今年の8月号で通巻1000号に達した。
 「毎月必死になって出してきました。ここまでやれば、父の遺志を受け継げたか、と」。父とは、初代会長である齊藤華城(昭和62年死去)。旧制中学の教員をしながら13年に東京・大井町に書道専門学校を設立し、最盛期には会員13万人を数え、戦闘機を国に献納するほどだった。しかし、空襲ですべてが灰に。華城は千葉県君津市の生家に戻り、地元の高校で教員をしながら書を教えた。戦後、華城が52歳の時に末っ子として生まれ、五十二(いそじ)と名付けられたのが現会長だ。
 地元の進学校、県立木更津高校の卒業間際、大学進学の道を選ばず、「刀鍛冶になろう」と決意。一人旅に出たが、「刀鍛冶になるのは無理だ」と刀工に諭され、断念した。
 「役所で働いたりもしたのですが、仕事が合わず結局父の手伝いを始めました。20歳を過ぎて、現代書家の武士(たけし)桑風(そうふう)先生のもとに通い、古典の臨書から始めました」。父や師が「5年やってものにならなかったらダメ」と話しているのを聞いて発奮したという。
 もう一人の師はケルトの文化を研究した画家の大野忠男氏。彼を通じて「作品を、美を見る目を養った」と言い、表意文字である漢字とは違う世界からも大きな影響を受けた。北欧のスカンジナビア半島にある中国の古代文字に似た図象を現地で採拓したのもその延長上のことであった。
 小学校低学年から90歳代まで指導するが、「美しく書く字の流れを意識すること。美しい字を書くことを教えていきたい」と話している。
(谷内誠)