2020年5月15日

[134]理事・明扇書藝會主宰 長谷川明扇(はせがわ・めいせん)さん(59)

第36回産経国際書展新春展出品作「桜づつみ」(タテ90センチ×ヨコ180センチ) 理事・明扇書藝會主宰 長谷川明扇(はせがわ・めいせん)さん  3日まで開催された第36回産経国際書展新春展に、昨年の台風19号で氾濫した千曲川(長野市)の水害を取り上げた「桜づつみ」を書き、出品した。
 「ずっと少字数書ばかりで、漢字仮名交じりは初めて。元は地元の小学校の先生が過去の水害を伝える創作劇のために作詞作曲した歌で、それが現実になった。『歌のように立ち上がらないと』と必死の思いで書きました」と語る。

 長谷川さんも長野市の生まれで、自宅は水没した新幹線基地のすぐ近く。小さいときから千曲川の流れを間近に見て育った。自宅は被害を免れたが、書道教室の生徒の中には床上浸水や自宅を失った人も出た。胸がつぶされるような毎日の中で、生徒からの一報でこの詞に出会い、作者の竹内優美さんの許可を貰って夢中で筆をとった。
 長谷川さんが書を本格的に始めたのは高1から。高2の時、東京で偶然、手島右卿の代表作「崩壊」を目にし、「頭にイナヅマが走った」ほどの衝撃を受けた。右卿に習いたい、その一念で、高校卒業後は右卿が校長を務める日本書道専門学校(東京都品川区)に入学。その後は地元に戻り、40歳で自宅に書道教室を開いた。
 「泥水との毎日の闘いのなかで感じたのは『書があって良かった』という思い。生徒たちと一緒にこれからも書き続けていきます」。
(福本雅保)