2011年9月26日

[35]産経国際書会評議員 森紀生(もり・としお)さん(66)

慟哭の魂...
強い線に ほとばしる気迫
森紀生(もり・としお)

第28回産経国際書展で最高賞のひとつである会長賞を受賞した。受賞作「慟哭の魂、焦土の魂に無情の風が吹く」は、濃墨の強い線に激しい気迫を感じさせる。

自宅のある山形市は東日本大震災の被害こそ少なかったが、東北沿岸部の無残な状況に、筆をとることができない時期が続いた。やがて、被災地を思う心情があふれ出し、一気に書き上げた。

山形市で生まれ、学校卒業後も地元でサラリーマン生活を送った。いわゆる60年安保世代であり、会社で労働運動に精を出したこともあった。

転機は40歳になったとき。「サラリーマンでは何も後世に残らない、何か生きた証を残したい」と一念発起し、近所で書道教室を営んでいた丹野真寿(ます)氏の門をたたいた。もともと絵、書、詩のいずれかを習いたいと考えていたが、丹野氏は自作の詩を書に表現する「近代詩文書」を推奨していたので、はからずも書と詩の両方を学ぶことができた。

産経国際書展では平成15年の第20回展で準大賞を受賞している。「現在は年金生活」と笑うが、丹野氏の後継者として書道団体「成栄会」の会長を務めるなど、多忙な日々を送る。(松本篤幸)