考える力、思考力を大切に...「考」

　「深く考えること」は、人間の個性であり、一番の強みとも捉(とら)えられますが、今回はこの「考」についてみていきましょう。「考」を分解(ぶんかい)すると「耂（老・ろう）」＋「丂（こう）」となります。「耂」は髭(ひげ)をたくわえ年を重ねた人間（知見豊(ゆた)かな人間）、「丂」は曲がる様子を表しています。
　つまり、様々な経験(けいけん)を積(つ)んで知識(ちしき)が豊富(ほうふ)な年配の人間がじっくりと曲がりくねりながら、奥(おく)まで思い進む様子から転じ、「かんがえる」「つきつめる」のような意味になったとされています。ロジカル（論理的）に考える力や思考力を付けることは多くの経験や学習が必要(ひつよう)で容易(ようい)ではありませんが、　ＡＩ（人工知能）が社会に浸透(しんとう)し、人間に取って代ることも多くなっていく一方、ますます人間の強みともいえる「深く考える力」が大切となってくるのではないでしょうか。
　※楷書が完成した中国唐代（７世紀頃）の「考」は「耂」＋「丂」で書かれた楷書が多く見受けられるため、楷書はその字体としました。
(産経国際書会理事　鈴木暁昇)