鳳（おおとり）や龍がおこした...「風」

　秋(あき)も深(ふか)まり、冷(つめ)たい風(かぜ)が身(み)に染(し)みる季節(きせつ)になってきました。「風」は、上(うえ)の金文(きんぶん)をみて分(わ)かるとおり、「凡(はん)（帆）」と「虫(むし)」に分解(ぶんかい)されます。古代中国(こだいちゅうごく)では、伝説上(でんせつじょう)の鳥(とり)や虫(むし)が羽(はね)を使(つか)って風を起(お)こすと考(かんが)えられていました。
　実(じつ)は、「風」と「鳳(おおとり)」＝伝説上の神鳥(しんちょう)＝の文字(もじ)は、もともと同(おな)じ文字だったとされています。人々(ひとびと)は、風とともに大空(おおぞら)を羽(は)ばたく鳳凰(ほうおう)の姿(すがた)を見(み)ていたのです。
　その後(あと)、天空(てんくう)には龍(りゅう)が住(す)むと考えられるようになり、風は龍の姿をした神(かみ)が起こすとされました。そして「凡」に、龍を含(ふく)めた爬虫類(はちゅうるい)を示す「虫」の文字が加(くわ)えられ、「風」の字が作(つく)られたという説(せつ)があります。
　このように漢字(かんじ)をひも解(と)くと、「風」は、なんとも神秘的(しんぴてき)な漢字と思(おも)えてきますね。
（産経国際書会評議員、鈴木暁昇）