2021年4月17日

[139] 常務理事・書研社 小川艸岑(そうしん)さん(73)

墨色のインプレッション二人展から「龍神による(二曲屏風)」
小川瓦木(がぼく)氏  前衛書道家、小川瓦木(がぼく)氏(1911―2000、産経国際書会元副会長)の三女として父が設立した書研社の運営や競書誌「書研」の編集を手伝いながら、自身の創作活動を行ってきた。2年前に、その代表と編集の仕事を町山一祥氏(産経国際書会常務理事)に委ねた。

 それを機に、父の作品やコレクションを、郷里の千葉県白井市郷土資料館に寄贈。昨年秋、紺綬褒章を受章した。
 「代表を離れて2年たち、ようやくほっとした感じがします」と大役を果たした安堵(あんど)感をにじませる。
 幼いころから、瓦木の背を見てきたが「父は決して、私に書を強制するようなことはなかったですね。おおらかな教え方で、細かいことを言う人ではなかったです」
 自身は、結婚・出産などもあり、本格的に書に向き合ったのは次男が小学校に上がる30代後半になってからで、書の世界には自分の意思で入っていくことになった。
 昨年、長年住み慣れた東京都世田谷区から同多摩市に転居した。そのタイミングで、「かな」の勉強を始めたという。
 「長く大きなものばかり書いていたので、小さな文字を書くことが楽しい。今まで分かっているようで分かっていなかったんだな、という発見がありますね」と声を弾ませる。
 自身が向き合うのは、線の芸術ともいえる墨象(ぼくしょう)。前衛書を、「分かりにくい」という人もいるが、「墨象は心の律動を瞬時に姿に表しているのです。そこから何かを感じることが最も大切」と強調した。
(谷内誠)