2011年5月20日

産経国際書会専管理事 貝瀬芳雨(ほうう)さん(74)

「執(えとき)」
甲骨文で美を追求
貝瀬芳雨(ほうう)

 「当時の人の気持ちを想像しながら、甲骨文で現代をどう表現したらいいかと考えるのが楽しいのです」

 31日から6日間、東京・銀座の銀座鳩居堂画廊で開く4回目の個展の副題に「甲骨文に魅せられて」とある。中国・殷時代に使われたとされる最古の漢字の線と形を生かして、オリジナルの美を追求するという独特の世界を確立した。

 幼少の頃から周囲にほめられるたびに習字が好きになり、高校生の時に、今も住んでいる埼玉県飯能市で書道を教えていた田上帯雨(たいう)氏に師事。伝統書で本格的に腕を磨いた。

 法政大学で国語と書道の教員資格を取得し、地元の高校に勤めたが、新聞記者の夫の求めに応じて退職。ただし、書道だけは続けることを条件にした。

 帯雨氏亡き後、古文書の研究家である成家徹郎氏と出会って甲骨文の面白さを知り、勉強に没頭。自らの表現手段にするようになった。「師匠が2人とも、とにかく自由に書かせてくれたのが幸いでした」

 闘病中の夫の介護に追われながら書道教室「雨心会」を主宰。「書は、つらいときや悲しいときも助けてくれる宗教みたいなものです」とほほ笑む。(原誠)