2018年6月22日

[114]産経国際書会顧問・旭石書道会会長 橋本旭石(はしもと・きょくせき)さん(82)

第34回産経国際書展出品作品「閑邪存其誠」(縦234×横53センチ)
橋本旭石(はしもと・きょくせき)さん  昨年9月に胃がんの宣告を受け、胃の全部と食道の一部を摘出した。173㌢で72キロあった体重は、54キロと激減したが完治。
「放置すれば余命6カ月の状況でしたが、日頃の鍛錬のお蔭で術後3日目に七千歩歩けた。父母への感謝と、生きている素晴らしさを感じながら毎日を過ごしています」と快活に語る。

名古屋出身で、戦火の増す中、長野に疎開。その地で父のミシン販売を手伝って一家を支えた。根っからの明るい性格で、小5でミシン修理をこなし取引先に可愛がられた橋本少年が、書道を始めた理由は、「領収書を書くのに必要だから」。父の勧めで、西脇呉石の文化書道会で師範を獲得した。
それが本業になるから人生はわからない。父から受け継いだ商売は順調だったが、取引先の倒産でがけっぷちに。40歳のとき、すがる思いで書道教室を始めた。
ここで役立ったのが商売で培った経験。書道教室が続かなかった人から理由を聞き出し、「書の稽古は半分。残り半分は講話とおしゃべり」という、愉しんで学ぶ指導で生徒を増やした。
イネ科の雑草スズメノカタビラで作った筆を使い、独特の線質を描き出す。「マネされない、常に新しいものを作っていきたい。毎日が感動だから、24時間頑張れる」。
(福本雅保)