2016年9月16日

[93]常務理事 小川艸岑さん(68) 書研社代表

回生
自分だけにしかできない書を
小川艸岑さん
 前衛書ともいわれ、文字性を超えた線の芸術である墨象(ぼくしょう)作家として名を馳せた小川瓦木の三女である。瓦木はこの分野の創設者である上田桑鳩の一門であり、幼少の頃には小川家にもよく来ていた桑鳩に直接手ほどきを受けたりもした。また、瓦木に多くの書道展や絵画展に連れて行かれ、「本物」の良さを教えられたという。

 本格的に書の道に入ったのは、結婚して子育てが一段落した38歳から。すでに瓦木は桑鳩の没後に独立して「書研社」を立ち上げていた。

 会の発行する競書誌「書研」の編集を手伝いながら、産経国際書展や現代書・前衛書の団体である東洋書人連合の海外展などへ出品を続けてきた。

 平成12年には初の個展を銀座で開いた。瓦木は準備中に亡くなり、個展へのアドバイスが最後の教えとなったと懐かしむ。

 今年でちょうど書歴30年の節目となった。瓦木が得意として多くの作品を書いた黒い紙が多く残っていたが、全て人にあげた。「自分だけにしか出来ない、心に響く感触を書にできたら」と静かに熱意を語る。(松本篤幸)