2015年11月27日

[83]審査会員 子龍会代表 片山澄男さん(71)

賏(えい)の金文
古代文字・金文に精通
片山澄男さん
 東京都渋谷の生まれ。家は空襲で焼け、池尻にあった母親の実家で育った。

 学校を出て初めは、広告制作の仕事に携わった。世は高度成長期の昭和40年代、広告の需要が急拡大した時期であり、家に帰れない日が続いたという。同時に身につけたレタリングの技術が、書道家へ進むとは礎(いしずえ)になった。「当時は広告チラシやポスターなど、活字に見える文字も手書きの時代。楷・行・草はもちろん相撲文字や歌舞伎文字など20種類以上が上手く書けて一人前」だったと懐かしむ。

 業界になじめず、広告制作にきっぱりと見切りをつけて町田市役所に奉職したのは30歳。この時に出合ったのが生涯の師と仰ぐ現代書家の故・長島南龍氏だった。「文字」学に造詣が深かった南龍氏の指導で書くための技法に止まらず、文字の成り立ちから意味するものまでの全てを学び、吸収してきた。

 「上手く書こうとしないこと」が持論だが、出品した公募展では文部科学大臣賞をはじめ、多くの賞に輝いている。

 現在は南龍氏を引き継いだ書道会を経営する傍らで、小中学生への大作書道指導にも熱が入る。2年後に予定している個展が楽しみだ。
(松本篤幸)