2013年7月16日

[57]産経国際書会顧問・三上錦水(きんすい)さん(80)

平成25年春の産経国際書会代表展出品作 呉邁遠「飛来雙白鵠」
自分の気持ちを書に託す
三上錦水(きんすい)さん
 16歳から就いた林錦洞(きんどう)に楷、行、草と教えられ、若くして習字の先生に押し上げられた。子供に教えることは楽しく、すべて自分の勉強にもなった。

 だが結婚後、育児のために書から遠ざかり、3年ほど休んでいる間に後輩の進歩にショックを受けた。これではいけないと自分の書を振り返り、気づいた答えは「自分の書を書いていこう」だった。以後、がむしゃらな書修行がスタートした。

 同時に、作品への思いが見えてきた。「書とは何だろうか」。内なる声からの問いかけに、ひたすら書いて、書いて、書いた。しかし、思うように書けない。

 悩む錦水に錦洞は厳しかった。「人まねはするな。何を表現したいのか、自分の書を作れ」。錦洞の言葉から得た答えが、「自分の気持ちを書に託す」だった。これが、錦水の書哲学になった。

 70代後半を過ぎ、ようやく書を楽しめるようになってきた。思い通りに筆が走る、字が生きているように流れていく。「これだッ」と思える作品が書けるようになった。いま、そう実感する。(柏崎幸三)