2011年4月22日

産経国際書会常務理事 松本美娜(みな)さん(79)

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書きあげるまでが楽しい
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 「書きあげるまでのプロセスが大切であり、人生で最も楽しい時間でもあります」

 数え年6歳の6月6日から書道を習い始め、物不足の戦時中も勤労動員の合間に地面に木の枝で文字を書いて練習するなど、常に書とともに歩んできた。

 結婚後に、書展で見た作品に感動して桑原江南氏に師事。どこをどう直すべきか、言葉では何も教えてくれない厳しい師だったが、「真剣に書と向き合って、自分で勉強しないと身につかないということを教えられた」と振り返る。

 もう一人、人生の師となったのが義母。「素朴で無学なお百姓さん」に過ぎないが、「この世にはめったなことでは来られないのだから、一日一日を大切に過ごしなさい」と常々語り、「慈しみの愛」を与えてくれる人だった。結婚前に、同じ東京・町屋に住む夫の家に初めてあいさつに行ったとき、「飯は食ったか、風呂に入るか」と、もてなされたことを忘れない。

 主宰する書道教室「桑文会」の教え子たちにも、自然と義母の教えを伝えてきた。すでに弟子を抱える教え子も多く、「書を通じて日本人としての心を伝承していってほしい」と願う。(原誠)

4月22日付け産経新聞より